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レオナルド・ダ・ヴィンチと「アンギアーリの戦い」展見どころ

2017年11月15日 (水) 企画展

 11月2日(木)よりレオナルド・ダ・ヴィンチと「アンギアーリの戦い」展が始まりました。この展覧会の見どころを会場の展示順に沿ってご紹介いたします。

 

 

 第1章では、今回のテーマの歴史的背景についてまずご案内します。展示室に足を踏み入れるとそこはイタリアの大都市フィレンツェの中心地・シニョーリア広場です。今回はこの広場に面したヴェッキオ宮殿の大広間にミケランジェロの《カッシナの戦い》と合わせて描かれるはずだったものの、共に未完に終わったレオナルド・ダ・ヴィンチの壁画《アンギアーリの戦い》が中心テーマとなります。かつてのシニョーリア広場の情景を伝える作品や、関係者の肖像画やメダル等を展示しています。ヴェロッキオとその工房による《ピュドナの戦い》は、レオナルドが弟子入りしていた時期の工房作ということもあり、とても興味深い作品となっています。

 

アンドレア・デル・ヴェロッキオと工房《ピュドナの戦い》1475年頃 ジャクマール=アンドレ美術館 Paris, Musée Jacquemart-André – Institut de France © Studio Sebert Photographes

 

 そして、第2章。今回の主役が《タヴォラ・ドーリア》と呼ばれる、《アンギアーリの戦い》の中心部分を成す「軍旗争奪場面」が描かれた板絵です。原寸大下絵は失われ、描きかけの壁画もヴァザーリによる壁画で覆われてその真実を知ることができない私たちには、貴重な手がかりとなる作品であり、現存するその他の同じ場面を描いた作品と比較しても、その細部に至るまでの迫真の描写力は抜きん出ています。

 

作者不詳(レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく)《タヴォラ・ドーリア》16世紀前半 ウフィツィ美術館 Gabinetto Fotografico delle Gallerie degli Uffizi

 

  

 そして、ミケランジェロによる《カッシナの戦い》もまた幻の作品です。この二大巨匠による競演は、当時も注目を浴びましたが、実現することはありませんでした。《カッシナの戦い》の構図を伝えるアリストティーレ・ダ・サンガッロによる模写は残念ながら愛媛会場ではメトロポリタン美術館への貸し出しのため、複製の展示となっていますが、マルカントニオ・ライモンディによる同時代の版画作品からもその一部の表現をみることができます。

 

マルカントニオ・ライモンディ《岸をよじ登る男たち》1510年 大英博物館版画素描部 © The Trustees of the British Museum

 

 

 

 「幕間」としてご紹介するのはレオナルドが得意とした優雅な女性美の表現です。

 《モナ・リザ》に代表されるような、柔和な独特の表情をたたえる女性像はレオナルドの真骨頂とも言えるでしょう。本展では《聖アンナと聖母子》の魅力を伝えるハマー美術館所蔵の模写作品をご紹介しています。

 

 ルーヴル美術館が所蔵しているこちらの作品は、たくさんの模写作品がありますが、この作品はレオナルドの愛弟子・サライによるものとされ、非常に出来栄えがよく、高く評価されています。レオナルドが試行錯誤の末に辿り着いた、革新的な構図にも注目です。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチの工房、おそらくサライ(本名:ジャン・ジャコモ・カプロッティ)

《聖アンナと聖母子》1508-13年頃 カリフォルニア大学ハマー美術館

Collection University of California, Los Angeles.Hammer Museum.Willitts J Hole Collection.

 そして第3章では、バロックの時代へ継承されたレオナルドの遺産を辿ります。

 

 

 

ピーテル・パウル・ルーベンスに帰属《アンギアーリの戦い》17世紀初頭 ウィーン美術アカデミー絵画館 Gemäldegalerie der Akademie der bildenden Künste Wien

 

 バロックの巨匠のひとり、ピーテル・パウル・ルーベンスも、影響を受けた一人です。ルーベンスはイタリアを訪れて各地で研究をしていますが、その際に入手した「軍旗争奪場面」の模写素描を上書きし、自分流に解釈した作品がルーヴル美術館に所蔵されています。今回展示されているのは、その素描から描かれたと思われる油彩画です。ルーベンスはその後もこうした激しい様相の馬や兵士の登場する作品を手掛けており、レオナルドから学んだ表現が生かされていると言えるでしょう。

 

 その他にもサルヴァトール・ローザやルカ・ジョルダーノ等後世の画家による騎馬表現を辿ります。

 そして最後のコーナーでは、本展をより多く楽しむためのヒントをご紹介しています。東京藝術大学の協力により立体彫刻として再現された《タヴォラ・ドーリア》や、その他の模写との比較解説パネル。また、最新技術を駆使して撮影された《タヴォラ・ドーリア》の写真を、モニターで拡大表示することもできます。改めて、レオナルドの「謎」に挑んでみてはいかがでしょうか。

 

 

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